2022年2月28日月曜日

コンクリートの溶出

 水産系加工工場から電話があった。

「調整槽の中の壁のコンクリートが剥がれているように見えるんですけど。どう思いますか?

」と水産加工工場の排水処理担当者から電話があった。



画像を送ってこられて観た時は「ウソ!」と思ったが、明らかにコンクリート面が剥がれ落ち、内部の骨材が見えているのが見えた。

コンクリートを溶出又は浸蝕する要因はなんだ?

①高アルカリ ②酸 ②高塩分濃度

担当者へ今の調整槽内汚水のpH測定を要求。
「pH7.5です。」
異常は無かった。

この測定結果は予想できた。これまで何度も測定しているからだ。
排水そのものが問題ではないことはわかる。

また、①高アルカリも考えにくい。

確かに、魚を扱うのでタンパク質(アミノ酸)は多く含まれる。
これは加水分解を受けて「アンモニア(NH3)」に変化する。アンモニアはpHを上昇させるが、コンクリートを浸食させるほどまでに上昇することはない。

画像をよく見てみると水に浸かっていない部分が崩落しているし、開口部の内側部分にも溶出部分がある。また、内部配管上部にもコンクリート塊と思われる残留物がある。




「これはガスかな?」と考えた。

以前問題となったポリ鉄の影響で既にこのようになっていた可能性もある。
その場合原因は、硫化水素ということになる。
これは危険だ。

いずれにせよ現場で状況を観察する必要がある。
「明日、10時までにそちらへ行きます。」
と連絡し「明日はまず原水槽も同じようになっているか見てみよう。」と思った。
原水槽も同様な状態にコンクリートがなっていたならそれはポリ鉄の影響などではないと断定が出来るから。

2022年2月16日水曜日

フロックの変化をみる -その②ー

フロック形状に注視した活性汚泥検鏡診断に心がけています。

この考え方は関与している客先にも共有しています。


活性汚泥の検鏡診断というと、


原生動物に代表される動く生物を観察することだと考える人が多いでしょう。


しかし、この生物群はフロックの形状によって出現する生物群が変わります。


また、処理対象の汚水の違いによって出現する生物数にも差があります。


出現する生物群の割合を比較して曝気槽の負荷を推測するのが検鏡診断の目的なのに生物数


自体が少ないと診断精度はドンとおちてしまいます。




そこで、従来の観察手法を踏まえつつ、フロック形状にも注視する観察法を弊社では確立しました。


この観察法では観察する頻度を増やす必要はありますが、診断を出すまでの時間を短縮することが出来ます。


その観察法がどのようなものかを少しご紹介します。


この後フロック画像が4枚登場します。曝気槽第1槽から第4槽までのものです。


皆さんは、そのフロックの違いや変化に気付くでしょうか?


では、ご覧ください。


曝気槽第1槽

曝気槽第2槽

曝気槽第3槽

曝気槽最終槽



気付かれたことはありましたか?

この活性汚泥中にはほとんど動く生物は出てきません。


このサンプルは過去1年間、毎月2回見続けている排水処理設備のものです。

その形状変化と現場担当者からの聞き取り、そして管理記録を合わせてみると排水処理全体の処理状態と運転管理法がみえてきます。



それでは、もう一度画像を観てみましょう。

それぞれの画像に解説を加えていきます。



第1槽

曝気槽第1槽

この槽のフロックはその数が多く、褐色の強いものが多いというのが特徴です。原水が投入される最初の槽ですから当然でしょう。投入される負荷にキッチリと反応しているとも言えます。



第2槽

曝気槽第2槽


この槽で見るべきところは白く見える部分、ここは水です。この部分が広ければフロックは良好に沈んでいます。褐色はやや弱くなっていますが、フロックが集積しています。これにより水の部分の面積が確保されています。




第3槽

曝気槽第3槽


打って変わってこの槽では水の部分はほとんど判りません。フロックの集積状態は解かれています。フロックの集積は数種のバクテリアが出す細胞内貯蔵物質ですからその分泌が無くなったと推測できます。前の槽であったものがこの槽で無くなったということで低負荷状態にあると推測できます。個々のフロックも砂粒状で小さい。



第4槽

曝気槽最終槽


フロックはほとんどが砂粒のように小さくなって、褐色も極めて弱くなっています。注目点は水の部分にある粒状のもの。これはピンポイントフロックと呼ばれるものでフロックが解体(=死滅)したものです。このフロックはすべて流出します。この槽でフロックは完全に解体状態にあり、ここは最終槽ですから過曝気状態にあるとも言えます。




検鏡後に現場の担当者に聞き取ったところ、


    ・処理水にSS(浮遊物質)が多い。


    ・第3槽のDO値 9.3mg/L、第4槽のDO値 10.5mg/Lで飽和状態。


    ・最終槽のMLSS濃度低下


        との情報。


私は、第3槽以降で低負荷となり過曝気状態にあることを報告しました。


また、今後の流入負荷の予測を尋ねたところ現状維持が見込まれているというので、

今後の対策として、


    ①曝気槽第3槽以降で曝気制限が有効。


    ②MLSS濃度が上昇しないよう注意。


    ③最終の曝気槽第4槽では状況によってはしばらく攪拌のみでも良いかもしれない。


とアドバイスしました。




動画も公開中です。
https://youtu.be/ukXZuqGMiq0

また、Facebookページでも日々の仕事や考えたことなどを投稿中です。

フロックの変化をみる ーその①ー

 一度に8カ所の活性汚泥を見るのは中々に大変なことですがこの検体は既に7年間、毎月2回検鏡し続けている硝化脱窒処理方式の排水処理設備のもので、特に食品系のものと比べると原生動物などの出現が非常に希薄です。なので、従来の生物診断法は適用することが難しいため、この施設独自の検鏡法を開発し診断を行っています。



当初は、4カ所の観察で行っていましたが精度に問題があったので私から提案し、8ヵ所見ることになりましたが、それは原生動物等の出現で推測する「負荷」がこのサンプルでは判らないためで、ならば曝気槽の1槽目から最終槽までの全フロックを見て「負荷」を推測しようと考えたためでした。



非常に特徴的なこの工場の活性汚泥は強固に大きなフロックを形成することはほぼありません。

強固で大きなフロック


 


 








2022年2月8日火曜日

曝気槽 酸欠 ラセン菌の出現

 高い薬剤を毎月数十万単位で使用していた、とある鶏肉加工工場。

根本的な解決法が無いものかと検討を重ね、いろんな業者を経由して弊社に相談があり現地で調査を実施しました。
現場で検鏡を行ってみると、非常に多くのラセン菌が出現していました。また、負荷の高い時に出現するⅠ群、Ⅱ群生物も多量に確認され酸欠が処理の不調と糸状性細菌を多く存在させる原因であることがわかりました。
最後に、二槽ある曝気槽の複数個所で活性汚泥の呼吸測定(測定の詳細は後日紹介)を実施し、結果をグラフ化しました。
このグラフの値は通過する負荷、つまりBODを表していますが、本来なら右下がりのグラフが描がかれるはずが歪なグラフが出来上がりました。
管理手法、設備上の問題がありそうです。



後日談、、、
私の経験上この現場のような鶏肉、食肉加工系の排水処理現場ではpH低下が起きますからpHが管理上の重要項目となっていて、DO測定が実施されているところが少ないという事実があります。測定しないのでDO計は所有していません。
この現場には排水処理設備を設計した業者が管理アドバイスに定期で入っていましたが、pH値管理を優先するあまり送風量を常に控えるようアドバイスをしていたようです。(酸化を抑制する目的と思われます。)また、驚いたことに返送汚泥配管が撤去されていてその理由を担当者に尋ねたところ「出入りの業者のアドバイスに従った。」との返答でした。俄かには信じ難い話でしたが処理不調の原因はすべて人為的なものだったのでした。これでは上手く処理が出来るはずありません。
私は上のような状況と事実をまとめ調査報告書を提出し、改善案を示しました。その後、返送汚泥管は再敷設されDOの管理が始まって、担当者も新たに排水処理経験者を採用され適切に維持管理が行われるようになりました。当然、使用していた高額の製剤も未使用となっています。