同じ会社でも「天と地」の差…「神様」に任せきりにした工場の末路
排水処理の現場を回っていると、時々「あの人は神様(あるいは王様)だから」「あの人がいないとうちの排水処理は立ち行かない。」と呼ばれるベテラン担当者に出会うことがあります。 「すごい技術を持っている」という意味で使われることもありますが、私がこの言葉を使うときは、まったく逆の意味です。 それは、「自分にしか分からないやり方で設備をブラックボックス化し、誰も手出しできない状態にしてしまった人」への皮肉です。 今日は、ある食品製造会社が持つ「2つの工場」で実際に起きた、あまりにも対照的な実話をお話しします。 工場Aの悲劇:「神様」がいた25年 一つ目の工場(工場Aとします)には、 25年以上 にわたり、たった一人で排水処理を守り続けてきたベテラン担当者がいました。 会社側は「彼に任せておけば何も問題は起きない。優秀な担当者だ」と信頼しきっていました。 しかし、彼が定年退職し、後任(未経験者)に引き継がれた直後、事態は急変します。 処理がうまくいかず、トラブルが頻発し始めたのです。 工場の関係者は当初こう思いました。 「前の担当者の時は問題なかったのに。 今度の後任はなんて腕が悪いんだ(稚拙だ) 」と。 しかし、私が調査に入って判明した事実は衝撃的でした。 現場事務所のどこを探しても、 過去25年分の運転記録が紙一枚残っていなかった のです。さらに、pH計やDO計といった基本的な測定機器すらありませんでした。 「神様」と呼ばれた彼は、数値を測ることも、日報に残すことも、工場長へ報告することもなく、すべて自分の「勘」だけで維持管理をし続けていたのです。 会社が「問題ない」と思っていたのは、単に「報告が上がってこなかった(隠されていた)」だけでした。 工場Bの希望:「記録」が救った未来 同じ会社のもう一つの工場(工場B)はどうだったでしょうか。 こちらにも長いキャリアを持つ担当者がいましたが、工場Aとは真逆の管理を行っていました。 毎日の測定記録 を必ず残す。 日報を作成し、毎日 工場長へ提出 する。 処理の不調や設備の不足があれば、 社内で共有 する。 私がコンサルティングに入った際、ここには 10年以上分のデータ がありました。 「調子が悪い」という現場の声だけでなく、それを裏付けるデータがあったため、私はそれを根拠に設備の改善提案を行うことができま...