フロック形状に注視した活性汚泥検鏡診断に心がけています。
この考え方は関与している客先にも共有しています。
活性汚泥の検鏡診断というと、
原生動物に代表される動く生物を観察することだと考える人が多いでしょう。
しかし、この生物群はフロックの形状によって出現する生物群が変わります。
また、処理対象の汚水の違いによって出現する生物数にも差があります。
出現する生物群の割合を比較して曝気槽の負荷を推測するのが検鏡診断の目的なのに生物数
自体が少ないと診断精度はドンとおちてしまいます。
そこで、従来の観察手法を踏まえつつ、フロック形状にも注視する観察法を弊社では確立しました。
この観察法では観察する頻度を増やす必要はありますが、診断を出すまでの時間を短縮することが出来ます。
その観察法がどのようなものかを少しご紹介します。
この後フロック画像が4枚登場します。曝気槽第1槽から第4槽までのものです。
皆さんは、そのフロックの違いや変化に気付くでしょうか?
では、ご覧ください。
曝気槽第1槽 |
曝気槽第2槽 |
曝気槽第3槽 |
曝気槽最終槽 |
気付かれたことはありましたか?
この活性汚泥中にはほとんど動く生物は出てきません。
このサンプルは過去1年間、毎月2回見続けている排水処理設備のものです。
その形状変化と現場担当者からの聞き取り、そして管理記録を合わせてみると排水処理全体の処理状態と運転管理法がみえてきます。
それでは、もう一度画像を観てみましょう。
それぞれの画像に解説を加えていきます。
第1槽
曝気槽第1槽 |
この槽のフロックはその数が多く、褐色の強いものが多いというのが特徴です。原水が投入される最初の槽ですから当然でしょう。投入される負荷にキッチリと反応しているとも言えます。
第2槽
曝気槽第2槽 |
この槽で見るべきところは白く見える部分、ここは水です。この部分が広ければフロックは良好に沈んでいます。褐色はやや弱くなっていますが、フロックが集積しています。これにより水の部分の面積が確保されています。
第3槽
曝気槽第3槽 |
打って変わってこの槽では水の部分はほとんど判りません。フロックの集積状態は解かれています。フロックの集積は数種のバクテリアが出す細胞内貯蔵物質ですからその分泌が無くなったと推測できます。前の槽であったものがこの槽で無くなったということで低負荷状態にあると推測できます。個々のフロックも砂粒状で小さい。
第4槽
曝気槽最終槽 |
フロックはほとんどが砂粒のように小さくなって、褐色も極めて弱くなっています。注目点は水の部分にある粒状のもの。これはピンポイントフロックと呼ばれるものでフロックが解体(=死滅)したものです。このフロックはすべて流出します。この槽でフロックは完全に解体状態にあり、ここは最終槽ですから過曝気状態にあるとも言えます。
検鏡後に現場の担当者に聞き取ったところ、
・処理水にSS(浮遊物質)が多い。
・第3槽のDO値 9.3mg/L、第4槽のDO値 10.5mg/Lで飽和状態。
・最終槽のMLSS濃度低下
との情報。
私は、第3槽以降で低負荷となり過曝気状態にあることを報告しました。
また、今後の流入負荷の予測を尋ねたところ現状維持が見込まれているというので、
今後の対策として、
①曝気槽第3槽以降で曝気制限が有効。
②MLSS濃度が上昇しないよう注意。
③最終の曝気槽第4槽では状況によってはしばらく攪拌のみでも良いかもしれない。
とアドバイスしました。
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