2021年3月31日水曜日

フロック形状を維持するということについて

見つかると「処理状態は良いといわれる」生物がいる


「この生物がいればOK。」といわれている生物が数種類います。
やはり一番有名なのは「ボルティセラ」でしょう。

 ボルティセラ


ボルティセラ属はフロックに固着し、頭頂部の繊毛で自らに向けて旋回流を起こし、周辺にあるピンポイントフロックを摂食します。このボルティセラと同様の生活スタイルを持つ「エピスティルス」「カルケシウム」などが優占化すると、沈殿槽で分離した上澄水の透視度は1mを超えるほどになります。

でも、誤解してはいけないのは、
「ボルティセラ」がいるから処理が良好になるのでは無いということです。

上にも書きましたが、ボルティセラはフロックに固着して生活します。
なので、フロック径が小さくなってしまうと固着できなくなり、頭頂部を外し(テロトロチ)遊泳し、その後いなくなってしまいます。



フロックの大きさや形状によって
        出現する原生動物は遷移する

活性汚泥の支配的な生物はバクテリアです。

このバクテリアを摂食して生活しているのがボルティセラ、アスピディスカなどの原生動物、微小動物などの生物です。

バクテリアを摂食して生きている原生動物等はフロックの形状によって出現する生物群が変わります。

フロックがバラバラ状のときには小さくて、浮遊しているフロックを摂食するのに有利な体形が小さく、素早く遊泳し続ける原生動物が。 
 
負荷が落ち着いて、フロックが成長して大きくなってくるとそれに合わせて、体型の大きな遊泳性のものが増えてきます。

更に、フロックが安定的に大きさを維持するようになるとフロックを匍匐するような生物が、また時を同じくしてフロックに固着するような生物が増えてきます。 

つまり、良好期に出現する生物を優占化させるにはフロックの形状を維持せねばなりません。





フロックの大きさを変化させる要因

フロックの形状は何によって変化するのか?

フロックとは?
バクテリアの集合体のことを言います。

バクテリアは単細胞の生物ですが、自然界では塊を作って生活をします。
活性汚泥のように浮遊するものは「フロック」として集団化。 
またあるものは、川底の石や水生植物の根に付着する「バイオフィルム」として。
基本的に集団化して生活しています。

 例えば、排水処理の生物処理に生息する活性汚泥中には300を超える種類のバクテリアが生息ていると言われています。
これらの種類の違うバクテリアが集団化するのは、300数種類の中の数種のバクテリアが粘着性物質を分泌することによります。
 
 排水処理に携わっている者にとって、厄介なのはこの粘着物質はずっと出続けるものではないということで、粘着物質が無くなったフロックはバラバラ状になり沈降性を悪化させます。




では、なぜフロックは集団化(フロック化)するのでしょう。

これは理由がハッキリしています。
フロックが集団化(フロック化)する時、活性汚泥の沈降性は良くなり処理水は清澄になります。
処理水が清澄である時、その水の中のBODは限りなく低くなるのですから、フロック化するのはBODが非常に少なくなった時であるといえます。

では、「曝気槽内のBODが低ければ、低いほど良い。」のかというと、それは違っていて、
BODが極端に低くなり過ぎると、エサにありつけなかったバクテリアは餓死(内生呼吸または自己酸化)します。粘着物質を分泌されなくなってフロックはバラバラになります。(=解体)逆に、BODが高めになればバクテリアは塊を作る必要がなくなります。(=分散)

長~い文章になってしまいましたが、結局ボルティセラなど良好期に現れる原生動物等を活性汚泥中にたくさん保持したいのならばフロック化を維持しなければならず、フロック化を維持するためには特に曝気槽終端部での負荷をちょうど良い少なさ加減にせねばならないということになります。

この辺りの負荷を読むのが排水処理の一番難しいところです。


排水処理にお困りの際には是非ご相談ください。

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2021年3月27日土曜日

そのトラブル、高負荷か? 低負荷か?

有機系の排水処理は生き物が行ないます。

生き物が行うので、様々な環境要因によっていろいろな現象が発生します。




 例えば、発泡現象。

右の写真のように真っ白な石鹸状の泡が発生することがあります。   

この泡はそれまでより突然に高負荷になった場合に発生する特徴的な泡です。





左の画像も高負荷時のトラブル
汚泥計量器ですが曝気槽での負荷を保ったまま沈殿槽に汚泥が流入したため返送汚泥が泡立ってしまったのです。










右の画像も高負荷時のトラブル。
その時点の負荷を大きく超えて流入する負荷に生き物たちはついて行けません。
結果、未処理のまま有機物が残り上澄水を着色させてしまいます。当然、このまま放流させると付近の水域を汚染させることになってしまいます。








トラブルが起こるのは高負荷時だけではありません。  
             

左の画像、問題がないように見えるかもしれません。
透明度が無く、よく見ると細かな粒子が浮上しているのがわかる状態です。
このような時、ろ紙(5C)にこの上澄水を通し、上澄水の透明度が増した場合、原因はSSです。
この場合のSSの発生原因は、低負荷による「フロックの解体」がその原因です。












また、低負荷時には曝気槽に下画像のような泡が発生することがあります。
低負荷とは、曝気槽内に生息している微生物量に対して入ってくるエサ量(BOD量)が少ない状態です。つまり、すべてのバクテリアにエサが行き渡らない状態です。



エサが摂取できないバクテリアは死んでしまいます。

バクテリアの細胞は、タンパク質や多糖類で出来ていますから常に曝気され強力に撹拌が行われている生物処理槽では、溶質したバクテリア由来の細胞質がメレンゲの如く泡となってしまうのです。

 排水処理の生物処理は生き物が行う処理ですから、その時々の生物処理槽の環境状態(水温やPH)と微生物量、そしてエサの量(BOD量)などによって様々な現象が生物処理槽や沈殿槽に表れるのです。これが異常現象が発生する理由です。

 我々、排水処理の維持管理に携わる人間は、この現象が現れる前に何らかの手を打って、その異常現象を抑えるのが仕事になります。いかにして、生物処理槽の負荷状態が「高負荷状態に近づいているのか、低負荷状態に近づいているのか」を読むことが維持管理の成否を決めることになります。



排水処理にお困りの際には是非ご相談ください。

2021年3月23日火曜日

活性汚泥検鏡診断

排水処理、有機系排水処理のもっとも重要な処理は生物処理です。

あまり、排水処理を知らない方は微生物と言うと「特別な」生き物を思い浮かべるようですが、そんなことはまったく無く自然に発生する微生物によって処理は行われています。
自然の自浄作用を人為的に高速化させたものが排水処理装置なのです。


 ボルティセラ属


排水処理の生物処理の中でもっともポピュラーな処理法は「活性汚泥法」ですが、その他にも

・ 担体流動法
・ 生物膜法

など微生物をどのような場所、物に定着させるかで呼び名が違う処理法がありますが、どの処理法も自然発生的に繁殖する微生物を利用しているのは一緒です。


生物処理に生息する微生物等は塊(フロック)をつくって生活します。

この塊(フロック)の大きさ(径)が大きければ、大きいほど汚泥の沈降性は上がり、この時に処理水はもっとも美しくなります。
しかし、このフロックは様々な環境要因によりその形状や大きさを変化させます。

フロックの変化は、生物処理槽の負荷状態によります。
生物処理槽の負荷が高い場合(高負荷)と負荷が低い時(低負荷)に、フロックはフロック化を解きバラバラ状になるのですが、外観を見るだけではどちらの状態にあるのかの判断は困難です。そのような状況判断をする際に行われるのが「活性汚泥検鏡診断」です。

検鏡診断法は数十年前から排水処理の現場では行われてきており、これまでの知見の集積により出現する微生物群の区分けすることにより生物処理槽の負荷状態を判定することが出来ます。
負荷状態が判定できれば、どのような操作を行うべきかの判断をすることが出来るようになりますから非常に便利です。

検鏡診断で観るのは、顕微鏡下に現れる原生動物や微小動物です。
原生動物・微小動物は、バクテリアの集合体=フロックを餌として生活をしています。もっとも重要なのは直接BODを摂取し、無害化してくれるバクテリアですが、バクテリアは大きさ1um以下で直接観察は難しい。
なので負荷の高低で変化するフロックを摂食する、光学顕微鏡で観察可能な原生動物等を観て聞接的にバクテリアの状態を推測します。






活性汚泥検鏡診断は基本的には現地で実施するのが一番です。
しかし、下記の条件が満たせれば宅配によって受付、実施することができます。
          
          1.採取した後すぐに10度以下で保管。
          2.採取した当日、冷蔵便で配送。
          3.2日後迄に到着

処理状況の判断にお困りなら一度御相談下さい。
メール、電話、ビデオ通話どの方法でも対応可能です。
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2021年3月22日月曜日

サバの油脂はハンパない

これほどとは思っていなかった。

多いのは解っていたけど

これまでは加圧浮上装置が壊れていたから見ることが出来なかった。

ひどいね、これは。

生物処理では水に溶けないものは入れてはいけないのが鉄則。

加圧浮上装置の修理をして正解。

これからは、作る前にどれほどの水質の排水が発生するのかを予想してから作りましょうね。

2021年3月20日土曜日

いろんな事が起こるな――

30年も排水処理の仕事に関わっていれば、いろんなトラブルには遭遇するものの。

今回のは初めてのケースでした。

ちょうどバキューム車が来ていたタイミングだったのでラッキーだった。